インドネシア語のiniとituは、日本語の「これ・それ・この・その」に近い指示語です。iniは話し手に近いもの、ituは話し手から離れたものや、すでに話題に出たものを示します。ただし、日本語の「それ」と「あれ」のような三段階ではなく、基本的には近いiniと、それ以外のituという二分法で考えると理解しやすくなります。
名詞を修飾するときは、buku ini「この本」、hotel itu「そのホテル」のように、名詞の後ろへ置くのが基本です。この記事では、単独用法、名詞修飾、文脈を指すitu、yang ini・yang itu、ini adalahとの関係、会話での省略まで整理します。語順の基本はインドネシア語の基本語順も参照してください。
iniは近いもの、ituは離れたものを示す
iniは、話し手の手元、目の前、心理的に近い対象を示します。ituは、少し離れた対象、相手の近くにあるもの、すでに共有された情報などを指します。距離は物理的な距離だけでなく、会話上の近さにも左右されます。
| 表現 | 日本語 | 場面 |
|---|---|---|
| Ini buku saya. | これは私の本です | 手元の本を示す |
| Itu mobil Pak Budi. | あれはブディさんの車です | 離れた車を示す |
| Ini enak. | これはおいしいです | 目の前の料理 |
| Itu benar. | それは正しいです | 相手の発言・前の内容 |
| Apa ini? | これは何ですか | 近い物を尋ねる |
| Apa itu? | それ/あれは何ですか | 離れた物や話題を尋ねる |
ituは日本語の「それ」と「あれ」の両方に対応するため、距離だけで機械的に訳せません。相手が手に持っている物をApa itu?と尋ねる場合、日本語では「それは何ですか」が自然です。遠くの建物なら「あれは何ですか」と訳せます。
名詞を修飾するときは名詞+ini・ituの順になる
インドネシア語では、指示語を名詞の後ろへ置きます。日本語の「この本」と逆の順で、buku iniです。所有表現や形容詞が加わる場合も、説明される名詞を先に置く考え方が基本です。
| インドネシア語 | 日本語 | 構造 |
|---|---|---|
| buku ini | この本 | 本+これ |
| hotel itu | そのホテル/あのホテル | ホテル+それ |
| makanan ini | この料理 | 料理+これ |
| ruangan itu | その部屋 | 部屋+それ |
| teman saya ini | こちらの私の友人 | 友人+私の+この |
| dokumen penting itu | その重要な文書 | 文書+重要な+その |
Ini buku saya.は「これは私の本です」で、Buku ini milik saya.は「この本は私の物です」です。語順が変わると、iniが文の主語なのか名詞を限定する語なのかが変わります。インドネシア語の所有表現も確認してください。
ituは前に出た話題や発言全体を指せる
ituは目に見える物だけでなく、直前の発言、予定、問題、考えなどを指せます。日本語の「それ」に近い用法です。この場合、物理的な距離ではなく、会話の中ですでに提示された情報を受けます。
| 会話・文章 | 日本語 |
|---|---|
| A: Rapatnya dibatalkan. B: Benarkah itu? | A:会議は中止です。B:それは本当ですか |
| Itu masalah yang harus segera diselesaikan. | それはすぐ解決すべき問題です |
| Saya setuju dengan itu. | 私はそれに賛成です |
| Jangan khawatir tentang itu. | そのことを心配しないでください |
| Itu sebabnya saya terlambat. | それが私が遅れた理由です |
| Karena itu, jadwalnya perlu diubah. | そのため、日程を変更する必要があります |
Karena itu「そのため」、setelah itu「その後」、selain itu「そのほかに」のように、ituは文章をつなぐ表現にも入ります。単独の「あれ」だけと覚えると、この重要な用法を見落とします。
yang ini・yang ituで「こちらのもの・そちらのもの」を表す
名詞が文脈から分かる場合、yang ini「こちらのもの」、yang itu「そちら/あちらのもの」と言えます。買い物、注文、複数候補からの選択で特に便利です。
| 表現 | 日本語 | 例文 |
|---|---|---|
| yang ini | こちらのもの | Saya mau yang ini. |
| yang itu | そちら/あちらのもの | Berapa harga yang itu? |
| yang mana | どれ・どちら | Anda pilih yang mana? |
| yang kecil ini | こちらの小さいもの | Saya pilih yang kecil ini. |
| yang berwarna biru itu | あの青いもの | Tolong ambil yang berwarna biru itu. |
yangの働きはyangの意味と使い方で詳しく説明しています。yang iniでは、具体的な名詞が省略され、yangが「該当するもの」を受けています。
ini adalah・itu adalahは説明を明確にする形
ini・ituの後ろにadalahを置くと、「これは〜です」「それは〜です」と定義・説明を明確にできます。ただし、日常会話ではadalahを省き、Ini hotel saya.のように言うことも一般的です。
| 形 | 日本語 | 自然な場面 |
|---|---|---|
| Ini adalah kartu identitas saya. | これは私の身分証明書です | 丁寧・説明的 |
| Ini kartu identitas saya. | これが私の身分証明書です | 日常会話 |
| Itu adalah keputusan perusahaan. | それは会社の決定です | 文章・説明 |
| Itu keputusan perusahaan. | それは会社の決定です | 簡潔な会話 |
| Ini bukan pesanan saya. | これは私の注文ではありません | 否定 |
| Apakah ini meja Anda? | これはあなたの机ですか | 確認 |
adalahはすべての日本語の「です」に必要な語ではありません。存在を表すadaとの違いはada・adalahの違いを確認してください。
場所を示すdi sini・di situ・di sanaとの違い
ini・ituは物や内容を指しますが、場所を示すときはsini「ここ」、situ「そこ」、sana「あそこ」を使います。前置詞di・ke・dariと組み合わせ、di sini「ここに」、ke sana「あそこへ」、dari situ「そこから」とします。
| 表現 | 日本語 | 例 |
|---|---|---|
| di sini | ここで・ここに | Tunggu di sini. |
| di situ | そこで・そこに | Tasnya ada di situ. |
| di sana | あそこで・あそこに | Hotelnya di sana. |
| ke sini | こちらへ | Silakan datang ke sini. |
| ke sana | あちらへ | Bus ini pergi ke sana. |
| dari situ | そこから | Jalan kaki dari situ. |
前置詞の使い分けはdi・ke・dariの違いを参照してください。ini・ituを場所語の代わりに使わず、物・内容と場所を分けます。
会話での使い方とよくある間違い
- 日本語と同じ順でini bukuと言って「この本」のつもりになる:buku iniが名詞修飾
- ituを「あれ」だけと覚える:相手の物や前の発言を指す「それ」にもなる
- 場所をini・ituだけで示す:場所ならsini・situ・sanaを使う
- すべての説明にadalahを入れる:日常会話では省略できる
- 人物をituだけで指す:名前、Bapak・Ibuなどの呼び方を優先する
練習では、buku「本」、tas「バッグ」、hotel「ホテル」を使い、Ini buku saya.「これは私の本」、Buku ini milik saya.「この本は私の物」、Buku itu milik siapa?「その本は誰の物ですか」の三つを作ってください。
iniは近いもの、ituは離れたものや共有済みの話題を示し、名詞を修飾するときは名詞の後ろへ置きます。物・内容を指すini・ituと、場所を示すsini・situ・sanaを分けて覚えましょう。

