インドネシア語では、動作を行う人よりも、動作を受ける物・人を話題にしたいときに受動態を使います。代表的な形が接頭辞di-+語幹です。membaca「読む」に対応するdibaca「読まれる」、membeli「買う」に対応するdibeli「買われる」のように作ります。
ただし、di-を付ければすべて完成するわけではありません。行為者が三人称か、一・二人称かによって自然な語順が変わり、前置詞di「〜で・〜に」との綴り分けも必要です。この記事では能動文からの変換、oleh、代名詞受動、di-kan・di-i、表記上の注意まで整理します。
di-受動態は対象を主語にして説明する
能動文では行為者が主語ですが、受動文では行為を受ける対象が文頭へ移ります。Petugas memeriksa paspor.「係員がパスポートを確認する」を受動態にすると、Paspor diperiksa oleh petugas.「パスポートは係員によって確認される」となります。
| 能動文 | di-受動文 | 焦点 |
|---|---|---|
| Petugas memeriksa paspor. | Paspor diperiksa oleh petugas. | パスポート |
| Budi membaca buku itu. | Buku itu dibaca oleh Budi. | その本 |
| Mereka membangun hotel ini. | Hotel ini dibangun oleh mereka. | このホテル |
| Polisi menutup jalan. | Jalan ditutup oleh polisi. | 道路 |
| Staf mengirim email. | Email dikirim oleh staf. | メール |
日本語訳では「〜される」になることが多いものの、インドネシア語の受動態は日本語より広く使われます。対象をすでに話題にしているとき、手順を説明するとき、行為者が不明・不要なときにも自然です。文章では、同じ対象を継続して説明するために受動文が選ばれることがあります。
meN-能動動詞からdi-受動動詞へ変える方法
能動態からdi-受動態へ変えるときは、meN-の変化形をそのままdi-へ置き換えるのではなく、語幹へ戻してからdi-を付けます。membacaの語幹はbacaなのでdibaca、menulisの語幹はtulisなのでditulis、mengirimの語幹はkirimなのでdikirimです。
| 語幹 | 能動形 | 受動形 | 意味 |
|---|---|---|---|
| baca | membaca | dibaca | 読む/読まれる |
| tulis | menulis | ditulis | 書く/書かれる |
| kirim | mengirim | dikirim | 送る/送られる |
| pilih | memilih | dipilih | 選ぶ/選ばれる |
| sapu | menyapu | disapu | 掃く/掃かれる |
| ambil | mengambil | diambil | 取る/取られる |
menulisからdinulis、mengirimからdingirimとはしません。meN-で消えたp・t・s・kも、受動形では語幹の子音が戻ります。memilih→dipilih、menulis→ditulis、menyewa→disewa、mengunci→dikunciです。meN-の変化規則は接頭辞meN-の意味と変化で確認できます。
三人称の行為者は動詞の後ろに置く
行為者がBudi、petugas、mereka、会社名などの三人称であれば、di-動詞の後ろに置きます。oleh「〜によって」を付ける形が分かりやすいですが、行為者が動詞の直後にあり、意味が明確ならolehを省くこともあります。
| 形 | 例文 | 日本語 |
|---|---|---|
| olehあり | Buku itu dibaca oleh Budi. | その本はブディに読まれます。 |
| oleh省略 | Buku itu dibaca Budi. | その本はブディが読みます。 |
| 行為者なし | Pintu sudah ditutup. | ドアはもう閉められました。 |
| 一般的な手順 | Formulir diisi dengan huruf kapital. | 用紙は大文字で記入します。 |
| 不明な行為者 | Tas saya dicuri. | 私のかばんが盗まれました。 |
olehは行為者を明示・強調するとき、行為者と動詞の間に別の語が入るときに有用です。一方、誰がしたか重要でない場合は行為者を省きます。空港の案内、規則、ニュース、製品説明などでは、対象や結果を中心に述べるため、行為者なしの受動文がよく現れます。
一・二人称ではdi-を使わない代名詞受動が基本
行為者がsaya「私」、kami「私たち」、kamu「あなた」などの場合、標準的な表現では対象を文頭にし、行為者の代名詞を語幹の直前へ置く形がよく使われます。Buku itu saya baca.「その本は私が読みます」となり、Buku itu dibaca oleh sayaより自然な場面が多くあります。
| 能動文 | 代名詞受動 | 日本語 |
|---|---|---|
| Saya membaca buku itu. | Buku itu saya baca. | その本は私が読みます。 |
| Kami sudah memesan kamar. | Kamar sudah kami pesan. | 部屋は私たちが予約済みです。 |
| Kamu membawa paspor itu. | Paspor itu kamu bawa. | そのパスポートはあなたが持って行きます。 |
| Anda harus mengisi formulir ini. | Formulir ini harus Anda isi. | この用紙はあなたが記入する必要があります。 |
| Saya akan membayar ongkosnya. | Ongkosnya akan saya bayar. | 料金は私が支払います。 |
この構造では、助動的な語の位置にも注意します。akan saya bayar、harus Anda isi、sudah kami pesanのように、akan・harus・sudahが行為者の前に置かれます。代名詞と語幹の間を自由に離すと不自然になりやすいため、一つのまとまりとして覚えてください。
di-と前置詞diは続け書き・分かち書きで区別する
接頭辞di-は動詞と続けて書きます。一方、場所を表す前置詞di「〜で・〜に」は、後ろの名詞と分けて書きます。発音は似ていますが、綴りによって文法的な役割が明確になります。
| 種類 | 正しい表記 | 意味 | 誤りの例 |
|---|---|---|---|
| 接頭辞 | ditulis | 書かれる | di tulis |
| 接頭辞 | dibeli | 買われる | di beli |
| 接頭辞 | dikirim | 送られる | di kirim |
| 前置詞 | di hotel | ホテルで・に | dihotel |
| 前置詞 | di Jakarta | ジャカルタで・に | diJakarta |
| 前置詞 | di sini | ここで・に | disini |
見分け方は、後ろが動詞の語幹なら続け、場所を表す名詞・指示語なら分けることです。dimasak「調理される」は続け、di dapur「台所で」は分けます。Daging dimasak di dapur.「肉は台所で調理されます」のように、一つの文で両方が使われることもあります。
di-kan・di-iと状態を表す受動表現
能動形がmeN-kan、meN-iである動詞は、受動形ではdi-kan、di-iになります。membukakan→dibukakan、mengirimkan→dikirimkan、mengisi→diisi、mengunjungi→dikunjungiのように対応します。接尾辞を勝手に外さず、動詞全体の組み合わせを確認します。
| 能動形 | 受動形 | 例文 | 日本語 |
|---|---|---|---|
| mengirimkan | dikirimkan | Tiket dikirimkan melalui email. | チケットはメールで送付されます。 |
| membukakan | dibukakan | Pintu dibukakan oleh staf. | ドアはスタッフが開けてくれます。 |
| mengisi | diisi | Formulir harus diisi. | 用紙は記入する必要があります。 |
| mengunjungi | dikunjungi | Tempat ini banyak dikunjungi wisatawan. | この場所は多くの旅行者が訪れます。 |
| menamai | dinamai | Pulau itu dinamai Komodo. | その島はコモドと名付けられました。 |
受動形は、結果としての状態を表す文にもよく使われます。Pintu sudah ditutup.は「誰かに閉められた」という行為だけでなく、「ドアが閉まった状態になっている」と理解されることがあります。文脈に応じて、出来事と結果状態の両方を考えてください。
di-受動態の練習方法とよくある間違い
練習では、能動文を一つ作り、対象を文頭へ移し、語幹を確認して受動動詞を作ります。その後、行為者が三人称か、一・二人称かで語順を選びます。
- 能動文の主語・動詞・目的語を分ける
- meN-付き動詞を語幹へ戻す
- 目的語を文頭へ移して主語にする
- 三人称ならdi-動詞+oleh+行為者にする
- saya・kami・kamu・Andaなら代名詞+語幹を検討する
- di-接頭辞と場所のdiの綴りを確認する
よくある誤りは、dibaca oleh sayaだけを唯一の受動形として覚えること、meN-の変化形へ直接di-を足すこと、di tulisのように接頭辞を分けて書くことです。まず基本語順と否定文の作り方を組み合わせ、Buku itu tidak saya baca.「その本は私は読みません」のような否定受動も練習してください。
三人称の受動は対象+di-動詞+行為者、一・二人称では対象+代名詞+語幹が中心です。受動態は「される」の直訳だけでなく、対象を話題にする自然な文型として理解すると、案内文や会話を読みやすくなります。

